出発前日の夜、リビングに広げた荷物を前にして、大きさの違うスーツケースをふたつ並べたまま動けなくなる。3泊4日の家族旅行、子どもの着替えとお土産のことを考えると、小さいほうでは足りない気がする。かといって大きいほうは、行きはスカスカで邪魔になりそうだ。こういう場面は、旅行の準備をしたことがある人ならたいてい覚えがあると思います。
結論から言うと、スーツケースのサイズは「泊数」と「人数」の掛け算で先に見当をつけてから、そこに機内持ち込みの可否や帰りの荷物量を足し引きして決めるのが失敗しにくいやり方です。感覚で選ぶと、だいたい大きいほうに寄せてしまい、身体的にも移動がつらくなります。
泊数だけで容量を決めない理由
結論として、泊数はサイズ選びの出発点にはなりますが、それだけで決めるのは危険です。目安として「1泊あたり10リットル程度」という数字がよく使われますが、これはあくまで着替えと洗面用具だけを想定した数字です。
理由は単純で、旅行の中身によって荷物の性質がまったく違うからです。ビジネスホテルに泊まって観光地を回るだけの旅と、スキー場や海辺で道具を使う旅では、同じ3泊でも必要な容量が倍近く変わります。さらに、行き先が国内か海外かでも変わります。海外旅行では変圧器や現地用の服装が増えるため、同じ日数でも一回り大きいサイズを選ぶ人が多いです。
具体的な場面を挙げます。2泊3日で温泉旅館に行くとします。着替えは少なくて済みますが、浴衣や羽織るものを自分で持ち込む人、お土産を大量に買う予定がある人は、同じ2泊でも容量に余裕が要ります。逆に、出張を兼ねた1泊であれば、機内持ち込みサイズで十分なことがほとんどです。
例外としては、洗濯ができる環境かどうかが大きく関わってきます。長期滞在でも、宿泊先にランドリーがあるなら、荷物量は日数に比例しません。1週間の旅行でも、3泊分の着替えで足りることがあります。ここは実際の宿泊先の設備を先に確認しておくと、サイズ選びで迷わずに済みます。
機内持ち込みか、預けるかで基準線が変わる
結論として、飛行機を使う旅行かどうかで、選ぶべきサイズの上限が決まってきます。機内持ち込みにこだわるなら、容量よりもまずサイズ規定を先に確認する必要があります。
理由は、航空会社ごとに機内持ち込みの寸法・重量の基準が異なり、しかも同じ会社でも国際線と国内線、運賃の種類によって変わることがあるからです。数センチの差で預け入れ扱いになってしまうこともあります。容量の大きさだけを見てスーツケースを選ぶと、当日カウンターで預け入れを求められて、想定外の時間や手間がかかることがあります。
具体的な場面としては、週末の弾丸旅行でLCCを使うケースが分かりやすいです。金曜の夜に出発して日曜に帰る1泊2日の旅行で、機内持ち込みだけで済ませたいと考える人は多いはずです。このとき、サイズがぎりぎりのスーツケースを選んでしまうと、混雑した便では預け入れに回されることもあります。余裕を持って一回り小さいサイズを選ぶか、ソフトタイプで多少の融通が利くものを選ぶかで、当日の安心感がかなり違います。
例外もあります。新幹線や車での移動が中心の旅行であれば、機内持ち込みの規定はそもそも関係ありません。この場合は、飛行機のルールに縛られず、純粋に荷物量だけでサイズを決めてかまいません。ここは迷うところですが、旅行の移動手段が複数ある場合は、いちばん制約の厳しい交通機関に合わせておくのが無難です。
人数分をまとめるか、分けるかで一段階変わる
結論として、家族や友人と旅行する場合、荷物をひとつにまとめるか、ひとりひとつ持つかで選ぶべきサイズはまったく違ってきます。まとめる場合は、思っているより大きいサイズが必要になります。
理由は、荷物をまとめると「かさばるもの」が集中するからです。例えば、洗面用具やドライヤー、常備薬といった共有できるものは1セットで済みますが、衣類は人数分そのまま必要です。3人分の着替えを1つのスーツケースに詰めようとすると、単純計算より大きな容量が必要になり、結果として重量もかさみます。空港や駅で持ち上げる場面を考えると、重すぎるスーツケースはかえって不便です。
具体的な場面を考えてみます。夫婦と小学生の子どもひとりで、2泊3日の旅行に出るとします。子どもの荷物は少ないからと大人の荷物とまとめてしまうと、Lサイズでもぎりぎりになることがあります。このケースでは、大人用に中型をひとつ、子ども用の着替えとおもちゃ用に小型をもうひとつ、という分け方のほうが、実際の持ち運びは楽になります。ひとつの巨大なスーツケースより、ふたつの中型のほうが、階段や電車の乗り換えで扱いやすいことも多いです。
例外として、宿泊先に必ず車で乗り付ける旅行であれば、荷物の分け方はそれほど重要ではありません。車のトランクに積んでしまえば、持ち運びの負担は最小限で済みます。逆に、公共交通機関を乗り継ぐ旅行、特に階段の多い駅を利用する場合は、荷物をできるだけ分散させたほうが体力的に楽です。
帰りの荷物が増える前提で余白を残す
結論として、行きの荷物量ぴったりのサイズを選ぶのは避けたほうがいいです。帰りにはお土産や現地で買ったものが増える前提で、一段階上のサイズか、拡張機能付きのものを選ぶのが安全です。
理由は単純で、旅行では行きより帰りのほうが荷物が増えるのが普通だからです。特に海外旅行や、地方の名産品を目当てにした旅行では、行きに空けておいたはずのスペースがすぐに埋まります。ぴったりのサイズで出発すると、帰りに荷物が入りきらず、手荷物を余分に持つ羽目になったり、その場で追加の袋を買うことになったりします。
具体的な場面としては、地方への旅行でお酒や特産品を大量に買い込むケースがよくあります。行きは3泊分の着替えだけで7割程度の容量で済んでいたのに、帰りは瓶詰めの調味料や地酒が加わり、スーツケースが閉まらなくなる。こうなると、空港や駅の窓口で追加の梱包用品を買う羽目になり、余計な時間と出費がかかります。ここは、最初から余白を計算に入れておけば防げる話です。
例外としては、行き帰りの荷物量がほぼ変わらないと分かっている旅行もあります。出張や研修旅行、荷物を現地で消費しきる前提のキャンプなどがこれにあたります。この場合は無理に余白を確保する必要はなく、行きの荷物量に合わせてぴったりのサイズを選んでかまいません。
迷ったら一段階大きいサイズを選ぶ理由
結論として、サイズで迷ったときは、小さいほうではなく大きいほうを選んでおくのが、結果として失敗が少ないです。これはこれまでの4つの理由をまとめた実践的な判断です。
理由は、スーツケースが小さすぎた場合の困りごとは、その場で解決しにくいからです。荷物が入りきらなければ、着替えを減らすか、余計な荷物を買って持ち帰るかしかありません。一方で、スーツケースが大きすぎた場合の困りごとは、多少の重さと持ち運びのかさばりだけで済みます。空いたスペースには、行きの機内で使う上着やクッションを入れておくこともできます。つまり、大は小を兼ねるという言葉が、比較的そのまま当てはまる場面です。
具体的な場面としては、旅行の日程が確定していない段階でスーツケースを買う場合が分かりやすいです。2泊か3泊か、まだはっきりしない予定であれば、3泊向けのサイズを基準にしておいたほうが、後から日程が延びても対応できます。逆に2泊向けのサイズを買ってしまうと、日程が延びた瞬間に荷物が入りきらなくなるおそれがあります。
例外として、体力的に大きなスーツケースを持ち運べない事情がある場合は、この考え方は当てはまりません。高齢の方や、ひとりで長い距離を移動する場面が多い人は、多少荷物が窮屈でも、軽くて小さいサイズを優先したほうが現実的です。ここは荷物の入りやすさより、実際に運べるかどうかを優先して考えるべきところです。
最終的には、旅行のたびに毎回ぴったりのサイズを選び直す必要はありません。1台で少し余裕のあるサイズを持っておき、荷物が少ない旅行のときは中に圧縮袋などで調整する、というやり方のほうが、長い目で見ると道具としての扱いやすさが増します。

